「食がとりもつ農・医・介護連携で安心して暮らせるむらづくり」を掲げ、医と食を繋げる
『株式会社 さとに医食同源』
今回は代表取締役の尾崎裕介さんにお話を伺いました。
高校生まで甲子園を目指して野球を続けていた尾崎さん。鳥取から出たいという気持ちから関西の大学へ進学したという。
「サークル・バイト・旅に出たりしていました。授業に出るためというよりかは、サークルの溜まり場として学校に行く感覚でしたね。」
「単位を取るためにいかに勉強するかではなくて、いかに情報を集めるか。これは社会人になってから意外と役に立ちますよ。」
多くの学生がどう勉強して単位を取るかを考える中で、この時から一風変わった考え方を尾崎さんは持っていたようだ。
「旅行も国内外にたくさん行きました。卒業旅行で行ったオーストラリアのエアーズロックなどが印象的ですね。」
「国内は北海道から沖縄まで行ったけど特に北海道がよかった。北海道に行った時は四年生でちょうど就職活動時期でしたが、構わず行ってましたね。就職活動では合銀(山陰合同銀行)一つしか受けなかったです。」
当時では珍しく、銀行1社しか試験を受けていないと語る尾崎さん。そんな尾崎さんは就職した後も普通の銀行員とは少し違うキャリアを積んだそうだ。
「銀行では20年くらい勤めました。鳥取、大阪、米子、東京、松江と転勤し、色んなところで働きました。そんな中で『こんな銀行員の働き方もあるんだな』と思うことが多々ありました。」
「最初の支店では、ヘルメットを被ってバイクに乗って集金したり、地方銀行員としての融資の基本を学びました。」
「東京には不良債権ビジネスを学ぶということで研修に行かせてもらいました。外資のビジネスを学ぶことで世の中がどんな理論で動いているか知ることができました。」
少し他とは違った銀行員生活を送っていた尾崎さんだが、まだまだこれだけではなかった。
「そのあと、不良債権の回収会社(サービサー)を立ち上げるということで、松江に帰りました。これも面白くて、会社を1から作り上げる貴重な体験をしました。」
「元々は地元で普通の銀行員として働くと思っていたのですが、東京と大阪で生活できたのはとてもいい経験でしたね。」
「サービサーの仕事(企業再生・事業再生)をしたことで、従来の仕事ではなく、再生支援協議会に転職し、企業再生の仕事をするようになりました。」
その後、それまでの経験を評価された尾崎さんは、さとに医食同源の経営を任されることになった。
ーー病院で出てくるような、健康を重視した配食サービスを始めたのはなぜですか?
「高齢者は何らかの病気を持っている方や、食べるものに制限がかかっている方が多いです。弊社のグループ法人ではそういう方を対象にしたクリニックや介護施設を運営しています。食べることが一番の楽しみとおっしゃる利用者がおられます。そういう方々に『こんなに食べていいの?』と思えるくらい食べていただき、喜んでもらえるのは嬉しいことです。」
言葉のひとつひとつから、高齢者の方にも食を通じて喜んでもらいたいという想いが見えてくる。
「また、社会的に在宅介護の流れがあり、主婦が仕事を辞めて高齢者のお世話をしています。高齢者を支える方が疲弊してきているように思います。」
「家族(特にお嫁さん)は特別な食事を毎日用意しないといけない。亭主である息子は妻の負担を減らしたいというニーズも聞きます。」
介護される方にはこんなにも食べれるという喜びを。
その家族には、介護の負担を減らすことによる生活のゆとりを。
どうすれば両者が幸せになれるのか、尾崎さんは考えている。
ーーこれまでの経験をされて、若い人や採用する人のどのようなところを見ますか?
「人間力の向上が仕事に課されたテーマだと思う。その素質は、好奇心旺盛でコミュニケーション能力がある人ですね」
「言われたことを真面目にこなす人はたくさんいます。ただ、自分で組み立て、いろんな人と意見を交わし、それを形にしていける人は少ないですね」
ーー最後に、学生に期待することを教えてください。
「腰骨を立ててしゃんとする、ということでしょうか。常に気持ちを入れることを意識して習慣づけていく。それによって話を聞く姿勢など人間が出来上がってくる。その姿勢を持つことが人間力向上のベースになると思います。」
「人と向き合うときに、挨拶をする、相手の目を見て話すなど、基本的なことを大切にしてほしいですね。」
「若い人は環境にもよるけど、僕たちの頃よりも勉強しているし、色々考えている。
コミュニケーションがないように見えて、インターネットで独自の世界と繋がっていたり。」
「視野を狭くしてしまうと、どこかのタイミングで折れてしまうので、変化に柔軟に対応できるようになって欲しいですね。」
人に躾けられて変わるのではなく、自分で変わっていく。
尾崎さんのインタビューを通して、変化が激しい世の中で生きる術を考えさせられました。
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